弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 小田 康夫
2017.10.04

控訴します!

「控訴します!」

  たまにテレビで聞くフレーズですが、裁判所でこのような発言を聞くことは普通ありません。なぜなら、控訴は一審の判決をした裁判所に、書面を提出する形で行うからです。
 
ところで、日本の裁判では、三審制が基本です。1回負けても、控訴をして、さらにそこで負けても上告ができます。1回負けてしまっても、もう2回チャンスがあるということです。1回の負け=1ストライクだとすれば、スリーストライク(三振)まではチャンスがあります。
 ただ、「チャンスは3回あるんだから、最初にストライクを取られても大丈夫。」などと悠長なことは言っていられません。何事も最初が肝心で、訴訟では、一審で判決がなされると、なかなかそれが覆されることはありません。二審では、一審で提出された資料も併せて検討するため、その資料を基になされた一審判決を無視することはありませんし、また、二審になって新たに主張されたものを取り上げない(時機に後れた攻撃防御方法として却下する)こともあります。二審判決を不服として上告をしても、上告審は重大な問題しか取り上げないという意味で入り口が狭く、その上、法律審ですから、例えば、二審判決で「目の前の信号が赤信号だった」と認定されたものが、上告審で、「やっぱり青信号だった」と認定されることはありません。

 数名から暴行を受けたとして、以前、事務所を訪れた方がおりました。
 相談者から依頼を受け、訴訟を提起し、暴行等の事実が認められ、加害者に対し損害賠償請求を認めた判決を取得しましたが、一審判決後、被告らが控訴したため、裁判は札幌高裁でも行われました。前述のように、二審となっては、一審で勝訴しているこちらが有利です。二審でも、加害者側の主張は認められず、こちらに有利な和解で解決しました。
 当然、最初から負けると分かっていて訴訟をする方はいませんが、上記のとおり、一審判決の結果が覆ることは少ないため、一審判決後になって、初めて相談に来て、「控訴すれば何とかなりませんか」という方がいても、「二審で覆せますよ!」という話にはなかなかなりません。

 対策としては、相手方とトラブルになり始めた時点で弁護士に相談しておくことが肝要で、被告側でいうと、遅くとも、裁判所から訴状が届いた段階で弁護士に相談をすることはマストでしょう。
 弁護士は依頼者(バッター)のコーチのような存在でもありますが、依頼者が最初のストライクで大きな空振りをしているとなると、フォームの修正は困難です。

 名コーチを謳って業務広告を出している事務所もあるかもしれませんが、控訴上告の壁は高く険しいという前提知識は持っておいて損はないでしょう。