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弁護士 小田 康夫
2019.04.04
2019.04.04
あなたの個人情報はいくらですか。
あなたが自分のプライバシー情報を売りに出す場合、いくらなら売りますか。
「いつも『無料○○』につられて会員登録していて、タダで提供しているから、100円」。
「私は秘密主義者。個人情報を提供するなら、大きな対価が絶対必要。100万円」。
誤解を恐れずにいえば、
裁判所は、あなたの個人情報を「5千円~3万円」の値段と判断しています。
エステティックサロンのTBC顧客情報漏洩事件では、氏名、年齢、住所、電話番号などの情報がインターネットから第三者に流出したというもので、原告は慰謝料として1人当たり100万円を求めました。
裁判所は、原告1人当たりの慰謝料として「3万円」を認めました(東京高裁平成19年8月28日。なお、当該事案ではアクセス制御を行っていたのは別会社でしたが、TBCが実質的に指揮監督をしていたとして、使用者責任を認めました)。他の裁判例などを見ていますと、氏名、年齢、住所、電話番号などの情報が流出し、原告のプライバシー権を侵害したとして認められる慰謝料は「5千円」程度と判断したものが多い印象です。
話は変わりますが、実は、私も、ベルギーに行った時期に(ベルギーに行った話は以前のコラムに→http://www.ak-lawfirm.com/column/1100)、クレジットカード情報が流出していた経験があります。クレジットカードの明細を見ると、数千円単位で、複数回、身に覚えのない引き落としがあり、カード会社に問い合わせて「使った覚えがない」。と話すとすぐに調査してもらい、返金してもらえました。その後、テレビを見ていると、ユーロスターで顧客情報の流出があったというニュースを見ました。この時期、インターネットでクレジットカード情報を登録して、料金を支払い、ユーロスター(仏パリ~ブリュッセル~英ロンドンを結ぶ鉄道)を利用しました。実際のところはわかりませんが、ここで登録した情報が盗まれたのかも。犯罪者集団にプライバシー情報の中でも特に重要なクレジットカード情報が流出していたのだとすると、恐ろしい体験をしたなと思います。
そもそもプライバシー権って何でしょうか。
かつては「私生活をみだりに公開されないという権利」(宴のあと事件)と定義されていました。これは基本的人権、憲法上の権利です。個人の私生活を暴くようなことを許さないという意味で、対マスメディアとの関係で発生したものですから、そのような定義でも歴史的な意義は十分大きいものだったといえるでしょう。
ところが、現代では、そのような定義では十分な意味を持てなくなっています。
そう、PCとインターネットが世界を変えたのです。
現代では、PC、インターネットの普及によって個人情報の「収集・保存・公開」が容易となりました。
このような変化を受けて、現代では、「自己情報コントロール権」というようにプライバシー権の中身を再構築する動きがありました。自らの情報を自ら取捨選択することができるよう、憲法上の権利が拡張された、と捉えても間違いではないでしょう(なお、最高裁は慎重ですから、明確な判断はまだしていません。)。
そして、現在では、SNSやビッグデータにより、個人情報の「収集・保存・公開」を超える事態に発展しています。「収集」された情報は体系的に整理され、顧客情報は膨大かつ集団の趣味趣向までも反映する「色のついた」情報の塊となりました。いったん情報が「公開」されてしまえば、その情報は、善意悪意にかかわらず、「拡散」され、その情報が日本にとどまらず全世界で「共有」されるようになりました。
このように日々刻々と変化する情報化社会で我々が生きる以上、将来的には、プライバシー権の「さらなる」再構築が必要となるかもしれません。
なお、上述のTBC顧客情報漏洩事件では、エステに通う人という「色のついた」情報が流されたため、慰謝料額が(通常、認定されることが多い)5千円よりも高額化したという見方があります。
数年前にEU裁判所で「忘れられる権利」が取り沙汰されましたが、個人情報が公開され、半永久的に保存され、拡散され、共有される社会においては、プライバシー権のいわば拡張類型たる「自己情報コントロール権」を明確に認めることが必要となった、というのは当然の流れと言ってよいでしょう。
ちなみに、虚偽の情報を削除することは当然認められてしかるべきですが、その情報が真実であった場合でも、情報が過去の事情を示している場合、時間の経過により情報の価値は劣化し、国民の知る権利の相対的価値は低下していきます。そうだとすると、過去のプライバシー情報を削除してもらうことは広く認められるべきでしょう。近時、破産者マップなるものが登場しましたが、そのような情報が国民の知る権利にどこまで資する情報なのか、今一度、考える必要があります。
PCの登場。
インターネットの普及。
そしてAI時代の到来。
今後の日本の裁判所が、慰謝料をどこまで認めるのか、過去の判例に縛れていないか、時代に即してプライバシー概念をアップデートしているかなどの視点で、普段のニュースを見ると、考察の角度も増えますし、ニュースの見方も変わってくるのではないでしょうか。
「いつも『無料○○』につられて会員登録していて、タダで提供しているから、100円」。
「私は秘密主義者。個人情報を提供するなら、大きな対価が絶対必要。100万円」。
誤解を恐れずにいえば、
裁判所は、あなたの個人情報を「5千円~3万円」の値段と判断しています。
エステティックサロンのTBC顧客情報漏洩事件では、氏名、年齢、住所、電話番号などの情報がインターネットから第三者に流出したというもので、原告は慰謝料として1人当たり100万円を求めました。
裁判所は、原告1人当たりの慰謝料として「3万円」を認めました(東京高裁平成19年8月28日。なお、当該事案ではアクセス制御を行っていたのは別会社でしたが、TBCが実質的に指揮監督をしていたとして、使用者責任を認めました)。他の裁判例などを見ていますと、氏名、年齢、住所、電話番号などの情報が流出し、原告のプライバシー権を侵害したとして認められる慰謝料は「5千円」程度と判断したものが多い印象です。
話は変わりますが、実は、私も、ベルギーに行った時期に(ベルギーに行った話は以前のコラムに→http://www.ak-lawfirm.com/column/1100)、クレジットカード情報が流出していた経験があります。クレジットカードの明細を見ると、数千円単位で、複数回、身に覚えのない引き落としがあり、カード会社に問い合わせて「使った覚えがない」。と話すとすぐに調査してもらい、返金してもらえました。その後、テレビを見ていると、ユーロスターで顧客情報の流出があったというニュースを見ました。この時期、インターネットでクレジットカード情報を登録して、料金を支払い、ユーロスター(仏パリ~ブリュッセル~英ロンドンを結ぶ鉄道)を利用しました。実際のところはわかりませんが、ここで登録した情報が盗まれたのかも。犯罪者集団にプライバシー情報の中でも特に重要なクレジットカード情報が流出していたのだとすると、恐ろしい体験をしたなと思います。
そもそもプライバシー権って何でしょうか。
かつては「私生活をみだりに公開されないという権利」(宴のあと事件)と定義されていました。これは基本的人権、憲法上の権利です。個人の私生活を暴くようなことを許さないという意味で、対マスメディアとの関係で発生したものですから、そのような定義でも歴史的な意義は十分大きいものだったといえるでしょう。
ところが、現代では、そのような定義では十分な意味を持てなくなっています。
そう、PCとインターネットが世界を変えたのです。
現代では、PC、インターネットの普及によって個人情報の「収集・保存・公開」が容易となりました。
このような変化を受けて、現代では、「自己情報コントロール権」というようにプライバシー権の中身を再構築する動きがありました。自らの情報を自ら取捨選択することができるよう、憲法上の権利が拡張された、と捉えても間違いではないでしょう(なお、最高裁は慎重ですから、明確な判断はまだしていません。)。
そして、現在では、SNSやビッグデータにより、個人情報の「収集・保存・公開」を超える事態に発展しています。「収集」された情報は体系的に整理され、顧客情報は膨大かつ集団の趣味趣向までも反映する「色のついた」情報の塊となりました。いったん情報が「公開」されてしまえば、その情報は、善意悪意にかかわらず、「拡散」され、その情報が日本にとどまらず全世界で「共有」されるようになりました。
このように日々刻々と変化する情報化社会で我々が生きる以上、将来的には、プライバシー権の「さらなる」再構築が必要となるかもしれません。
なお、上述のTBC顧客情報漏洩事件では、エステに通う人という「色のついた」情報が流されたため、慰謝料額が(通常、認定されることが多い)5千円よりも高額化したという見方があります。
数年前にEU裁判所で「忘れられる権利」が取り沙汰されましたが、個人情報が公開され、半永久的に保存され、拡散され、共有される社会においては、プライバシー権のいわば拡張類型たる「自己情報コントロール権」を明確に認めることが必要となった、というのは当然の流れと言ってよいでしょう。
ちなみに、虚偽の情報を削除することは当然認められてしかるべきですが、その情報が真実であった場合でも、情報が過去の事情を示している場合、時間の経過により情報の価値は劣化し、国民の知る権利の相対的価値は低下していきます。そうだとすると、過去のプライバシー情報を削除してもらうことは広く認められるべきでしょう。近時、破産者マップなるものが登場しましたが、そのような情報が国民の知る権利にどこまで資する情報なのか、今一度、考える必要があります。
PCの登場。
インターネットの普及。
そしてAI時代の到来。
今後の日本の裁判所が、慰謝料をどこまで認めるのか、過去の判例に縛れていないか、時代に即してプライバシー概念をアップデートしているかなどの視点で、普段のニュースを見ると、考察の角度も増えますし、ニュースの見方も変わってくるのではないでしょうか。